栗山大膳
森鴎外
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)筑前國《ちくぜんのくに》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)福岡の城主黒田|右衞門佐忠之《うゑもんのすけたゞゆき》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#「|有之間敷候《これあるまじくそろ》」は底本では「有|之間敷候《これあるまじくそろ》」]
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)偶《たま/\》
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
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寛永九年六月十五日に、筑前國《ちくぜんのくに》福岡の城主黒田|右衞門佐忠之《うゑもんのすけたゞゆき》の出した見廻役が、博多《はかた》辻《つじ》の堂《だう》町で怪しい風體の男を捕へた。それを取り調べると、豐後國《ぶんごのくに》日田にゐる徳川家の目附役竹中|采女正《うねめのしやう》に宛《あ》てた、栗山大膳利章《くりやまだいぜんとしあき》の封書を懷中してゐた。城内でそれを開いて見れば、忠之が叛逆《はんぎやく》の企をしてゐると云ふ訴であつた。
當時忠之と利章とは、非常に緊張した間柄になつてゐ
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