は気おくれがして、分からぬなりに屈服してしまうのである。
 末造は折々烟草を呑んで烟《けぶり》を吹きながら、矢張《やはり》女房の顔を暗示するようにじっと見て、こんな事を言っている。「それ、お前も知っているだろう。まだ大学があっちにあった頃、好く内に来た吉田さんと云うのがいたなあ。あの金縁目金《きんぶちめがね》を掛けて、べらべらした着物を着ていた人よ。あれが千葉の病院へ行っているが、まだ己の方の勘定が二年や三年じゃあ埒《らち》が明かねえんだ。あの吉田さんが寄宿舎にいた時から出来ていた女で、こないだまで七曲《ななまが》りの店《たな》を借りて入れてあったのだ。最初は月々|極《き》まって為送《しおく》りをしていたところが、今年になってから手紙もよこさなけりゃ、金もよこさねえ。そこで女が先方へ掛け合ってくれろと云って己に頼んだのだ。どうして己を知っているかと思うだろうが、吉田さんは度々己の内へ来ると人の目に附いて困るからと云って、己を七曲の内へ呼んで書換の話なんぞをした事がある。その時から女が己を知っていたのだ。己も随分迷惑な話だが、序《ついで》だから掛け合って遣ったよ。ところがなかなか埒は明か
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