驕Bこうなっているのが、却《かえ》って下手にお礼をしてしまったより好《い》いかも知れぬと思ったのである。
しかしお玉はその恩に被ていると云うことを端緒にして、一刻も早く岡田に近づいて見たい。唯その方法手段が得られぬので、日々《にちにち》人知れず腐心している。
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お玉は気の勝った女で、末造に囲われることになってから、短い月日の間に、周囲から陽に貶《おとし》められ、陰に羨《うらや》まれる妾と云うものの苦しさを味って、そのお蔭《かげ》で一種の世間を馬鹿にしたような気象を養成してはいるが、根が善人で、まだ人に揉《も》まれていぬので、下宿屋に住まっている書生の岡田に近づくのをひどくおっくうに思っていたのである。
そのうち秋日和に窓を開けていて、又岡田と会釈を交す日があっても、切角親しく物を言って、手拭を手渡ししたのが、少しも接近の階段を形づくらずにしまって、それ程の事のあった後《のち》が、何事もなかった前と、なんの異なる所もなくなっていた。お玉はそれをひどくじれったく思った。
末造が来ていても、箱火鉢を中に置いて、向き合って話をしている間に、これ
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