》は髮《かみ》の二三|寸《ずん》伸《の》びた頭《あたま》を剥《む》き出《だ》して、足《あし》には草履《ざうり》を穿《は》いてゐる。今《いま》一人《ひとり》は木《き》の皮《かは》で編《あ》んだ帽《ばう》を被《かぶ》つて、足《あし》には木履《ぽくり》を穿《は》いてゐる。どちらも痩《や》せて身《み》すぼらしい小男《こをとこ》で、豐干《ぶかん》のやうな大男《おほをとこ》ではない。
道翹《だうげう》が呼《よ》び掛《か》けた時《とき》、頭《あたま》を剥《む》き出《だ》した方《はう》は振《ふ》り向《む》ひてにやりと笑《わら》つたが、返事《へんじ》はしなかつた。これが拾得《じつとく》だと見《み》える。帽《ばう》を被《かぶ》つた方《はう》は身動《みうご》きもしない。これが寒山《かんざん》なのであらう。
閭《りよ》はかう見當《けんたう》を附《つ》けて二人《ふたり》の傍《そば》へ進《すゝ》み寄《よ》つた。そして袖《そで》を掻《か》き合《あは》せて恭《うや/\》しく禮《れい》をして、「朝儀大夫《てうぎたいふ》、使持節《しぢせつ》、台州《たいしう》の主簿《しゆぼ》、上柱國《じやうちゆうこく》、賜緋魚袋《しひ
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