ぎよたい》、閭丘胤《りよきういん》と申《まを》すものでございます」と名告《なの》つた。
二人《ふたり》は同時《どうじ》に閭《りよ》を一目《ひとめ》見《み》た。それから二人《ふたり》で顏《かほ》を見合《みあは》せて腹《はら》の底《そこ》から籠《こ》み上《あ》げて來《く》るやうな笑聲《わらひごゑ》を出《だ》したかと思《おも》ふと、一しよに立《た》ち上《あ》がつて、厨《くりや》を驅《か》け出《だ》して逃《に》げた。逃《に》げしなに寒山《かんざん》が「豐干《ぶかん》がしやべつたな」と云《い》つたのが聞《きこ》えた。
驚《おどろ》いて跡《あと》を見送《みおく》つてゐる閭《りよ》が周圍《しうゐ》には、飯《めし》や菜《さい》や汁《しる》を盛《も》つてゐた僧《そう》等《ら》が、ぞろ/\と來《き》てたかつた。道翹《だうげう》は眞蒼《まつさを》な顏《かほ》をして立《た》ち竦《すく》んでゐた。
底本:「鴎外全集 第十六卷」岩波書店
1973(昭和48)年2月22日発行
※底本では「寒山拾得」「附寒山拾得縁起」と「附」付きでまとめてあったものを、「寒山拾得」「寒山拾得縁起」として分割しました。
入力:青空文庫
1997年10月8日公開
2004年3月24日修正
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