ッサン》 が今も残っているのである。そういう風に、どの人種にも美しいところがある。それを見つける人の目次第で美しいところがあると信じているロダンは、この間から花子という日本の女が 〔varie'te'〕《ワリエテエ》 に出ているということを聞いて、それを連れて来て見せてくれるように、伝《つて》を求めて、花子を買って出している男に頼んでおいたのである。
今来たのはその興行師である。〔Impre'sario〕《アンプレサリオ》 である。
「こっちへ這入らせて下さい」とロダンはいった。椅子をも指《さ》さないのは、その暇《いとま》がないからばかりではない。
「通訳をする人が一しょに来ていますが。」機嫌《きげん》を伺《うかが》うように云うのである。
「それは誰ですか。フランス人ですか。」
「いいえ。日本人です。L'Institut《ランスチチュウ》 Pasteur《パストョオル》 で為事をしている学生ですが、先生の所へ呼ばれたということを花子に聞いて、望んで通訳をしに来たのです。」
「よろしい。一しょに這入らせて下さい。」
興行師は承知して出て行った。
直ぐに男女の日本人が這入って来た。二人と
前へ
次へ
全13ページ中4ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
森 鴎外 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング