といふ。此日天赫々なれども、山間の駅ゆゑ瘴気冷然たり。行程八里|許《きよ》。」碓氷峠の天産植物に言及してゐるのは、蘭軒の本色である。北五味子は南五味子のびなんかづらと区別する称である。砂参は鐘草とあるが、今はつりがねにんじんと云ふ。桔梗科である。つりがねさうは次の升麻と同じく毛※[#「くさかんむり/艮」、第4水準2−86−12]《まうこん》科に属して、くさぼたんとも云ふ。劉寄奴は今菊科のはんごんさうに当てられ、おとぎりさうは金糸桃科の小連翹に当てられてゐる。蘭軒は前者を斥してゐるのであらう。
詩が二首ある。「碓氷嶺。碓氷危険復幽深。五月山嵐寒透襟。蘿掛額般途九折。雲生脚底谷千尋。顧看来路人如豆。仰望前巓樹似簪。欲訪赤松応不遠。群羊化石石成林。望浅間岳。信陽第一浅間山。劣与芙蓉伯仲間。岳勢肥豊不危険。焔烟日日上天※[#「門<環のつくり」、7巻−61−下−16]。」
第六日。「廿四日卯時に発し、朝霧《てうむ》はれんとするとき、筑摩川の橋を渡る。此より浅間岳を望む。烟の升《のぼ》る焔々たり。此川|大《おほい》なれども水至て浅し。礫砂至て多し。万葉新続古今雪玉集みなさゞれ石をよみたり。古来
前へ
次へ
全1133ページ中96ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
森 鴎外 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング