くしは榛軒が何歳を以て就学したか知らない。権《かり》に十四歳を以てしたとすると、恰も好し※[#「木+夜」、第3水準1−85−76]斎が常関書屋に隠れた時である。榛軒は新に湯島の店の主人となつた※[#「木+夜」、第3水準1−85−76]斎の子懐之と同庚であつた。
 柏軒の鉄三郎が※[#「木+夜」、第3水準1−85−76]斎退隠後の弟子たることは、疑を容れない。幼年の間鉄三郎は恐くは父に句読を受けてゐたであらう。しかしその文学出精と云ふを以て、夙《はや》く十二歳にして正精の賞詞を受けたことを思へば、少くも一二年前から師を外に求めてゐたであらう。そして其師は即ち※[#「木+夜」、第3水準1−85−76]斎であつた。
 榛軒と慊堂とは、わたくしは何時始て相見たか知らない。姑《しばら》く榛軒は※[#「木+夜」、第3水準1−85−76]斎に従学すると同時に、慊堂にも従学したとすると、当時※[#「木+夜」、第3水準1−85−76]斎は四十三歳、慊堂は四十七歳であつた。慊堂は羽沢にあること既に七年になつてゐた。
 此年の夏の初には、狩谷※[#「木+夜」、第3水準1−85−76]斎が京都に往つてゐた。こ
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