はセルギウスの手を取つて、優しく微笑んで云つた。「でもそれはあんまり大業《おほげふ》にお考へなさるのぢやありますまいか。」
「いや。さうでない。わたしはね、色好みで、人殺しで、神を涜した男だ。※[#「言+墟のつくり」、第4水準2−88−74]衝きだ。」
「まあ。どうしたと云ふのでせう。」
「それでもわたしは生きてゐなくてはならない。今までわたしは何事をも知り抜いてゐるやうに思つて、人にどうして世の中を渡るが好いと教へて遣つたりなんかした。その癖わたしはなんにも分つてゐないのだ。そこで今あなたに教へて貰はうと思ふのです。」
「まあ。何を仰《おつし》やるの。それではわたくしに御笑談《ごぜうだん》を仰やるやうにしか思はれませんね。昔わたくしの小さい時も、好くわたくしを馬鹿にしてお遊びなすつた事がありましたが。」
「なんのわたしがあなたに笑談を云ふものですか。わたしは決してそんな事はしない。どうぞあなたは今どうして日を暮してお出だか、それをわたくしに教へて下さい。」
「あの。わたくしでございますか。それは/\お恥かしい世渡をいたしてをりますの。これは皆神様のお罰《ばち》だと存じます。自分でいた
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