スの祭の日にピウスの肖像を長き間凝視し居りしに、其女の生みし男子の容貌全く彼肖像に似たりし由に候。生れたる赤子は彼聖者の如く老衰したる面貌を呈し、生れし時、両手を胸の上にて組み合せ、開きたる目は空《くう》を見居り、肩の上に黶子《ほくろ》ありて、聖者の戴ける垂れたる帽子の形になり居りし由に候。若し此記者マルブランシユの著名なる哲学者たり、デカルトの後継者たるをも猶信じ難しと為《な》す者あらば、小生は更にマルチン・ルウテルの伝へし所を紹介致すべく候。ルウテルの食卓演説の中に左の如き物語有之候。ルウテルがヰツテンベルヒに在りし時、頭の形、髑髏《どくろ》に似たる男を見しことありて、其履歴を問ひしに、其男の母は妊娠中死骸を見て甚しく驚きしことありし由に候。其の他ヘリオドオルがリブリイ、エチオピコオルムに記載したる物語の如きは、最も信を置く可きものゝ如く存ぜられ候。エチオピアの王ヒダスペスは后《きさき》ペルシナを娶《めと》りて十年の間子無かりしに、十年目に姫君誕生ありし由に候。然るに其姫君は白人種に異らざりしゆゑに、父王に見せなば其|怒《いか》りに触るべしと思ひ、密に人に托して捨てさせし由に候。さ
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