いう同年位の少年であった。裔一のお父様はお邸の会計で、文案を受け持っている榛野《はんの》なんぞと同じ待遇を受けている。家もお長屋の隣同志である。
僕のお父様はお邸に近い処に、小さい地面附の家を買って、少しばかりの畠にいろいろな物を作って楽んでおられる。田圃《たんぼ》を隔てて引舟の通が見える。裔一がそこへ遊びに来るか、僕がお長屋へ往くか、大抵離れることはない。
裔一は平べったい顔の黄いろ味を帯びた、しんねりむっつりした少年で、漢学が好く出来る。菊池三渓を贔負《ひいき》にしている。僕は裔一に借りて、晴雪楼|詩鈔《ししょう》を読む。本朝虞初新誌《ほんちょうぐしょしんし》を読む。それから三渓のものが出るからというので、僕も浅草へ行って、花月新誌を買って来て読む。二人で詩を作って見る。漢文の小品を書いて見る。先ずそんな事をして遊ぶのである。
裔一は小さい道徳家である。埴生と話をするには、僕は遣り放しで、少しも自分を拘束するようなことは無かったのだが、裔一と何か話していて、少しでも野卑な詞、猥褻《わいせつ》な詞などが出ようものなら、彼はむきになって怒るのである。彼の想像では、人は進士及第をし
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