な色で、下に白|襟《えり》を襲《かさ》ねていました。帯に懐剣を挿《さ》していても似合いそうな人です」
僕のふいと言った形容が、お母様にはひどくお気に入った。懐剣を持っていそうなと云うのが、お母様には頼もしげに思われるのである。そこで随分熱心に勧められる。安中も二三度返詞を聞きに来る。しかし僕はついつい決答を与えずにしまった。
程経てこのお嬢さんは、僕の識っている宮内省の役人の奥さんになられたが、一年ばかりの後に病死せられた。
*
同じ年の冬の初であった。
来年はいよいよ洋行が出来そうだという噂がある。相変らず小菅の内にぶらぶらしている。
千住に詩会があって、会員の宅で順番に月次会《つきなみかい》を開く。或日その会で三輪崎霽波《みわざきせいは》という詩人と近附になった。その霽波が云うには、自分は自由新聞の詞藻欄《しそうらん》を受け持っているが、何でも好いから書いてくれないかと云う。僕はことわった。しかし霽波が立って勧める。そんなら匿名《とくめい》でも好いかと云うと、好いと云う。僕は厳重に秘密を守って貰うという条件で承知した。
その晩帰って何を書いたら好かろうか
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