みちの記
森鴎外
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)碓氷嶺《うすいとうげ》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一番|汽車《きしゃ》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)蜻※[#「虫+廷」、第4水準2−87−52]《とんぼう》
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明治二十三年八月十七日、上野より一番|汽車《きしゃ》に乗りていず。途にて一たび車を換うることありて、横川にて車はてぬ。これより鉄道馬車雇いて、薄氷嶺《うすいとうげ》にかかる。その車は外を青「ペンキ」にて塗りたる木の箱にて、中に乗りし十二人の客は肩《かた》腰《こし》相触れて、膝は犬牙《けんが》のように交錯《こうさく》す。つくりつけの木の腰掛《こしかけ》は、「フランケット」二枚敷きても膚を破らんとす。右左に帆木綿《ほもめん》のとばりあり、上下にすじがね引きて、それを帳の端の環にとおしてあけたてす。山路になりてよりは、二頭の馬|喘《あえ》ぎ喘ぎ引くに、軌幅《きふく》極めて狭き車の震《ふ》ること甚しく、雨さえ降り
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