に漢文体を用いるのも、また形式未成のゆえである。これが歴史である。現在はかくのごとくである。
 近ごろわたくしを訪うて文学芸術の問題ないし社会問題に関する意見を徴し、また小説を求むるものが多い。わたくしはその煩《はん》にたえない。あえてあからさまに過去と現在とを告げて徴求の源をふさぐ。
 顧炎武はかつて牌《はい》を室に懸けて応酬文字を拒絶した。この「なかじきり」もまた顧家懸牌の類である。
[#地から1字上げ]大正六年九月



底本:「日本の文学 2 森鴎外(一)」中央公論社
   1966(昭和41)年1月5日初版発行
   1972(昭和47)年3月25日19版発行
初出:「斯論」
   1917(大正6)年9月
入力:土屋隆
校正:小林繁雄
2005年10月5日作成
青空文庫作成ファイル:
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