フ三百年祭の事を知らせてよこした時なんぞは、秀麿はハルナックをこの目覚ましい祭の中心人物として書いて、ウィルヘルム第二世とハルナックとの君臣の間柄は、人主が学者を信用し、学者が献身的態度を以《もっ》て学術界に貢献しながら、同時に君国の用をなすと云う方面から見ると、模範的だと云って、ハルナックが事業の根柢《こんてい》をはっきりさせる為めに、とうとう父テオドジウスの事にまで溯《さかのぼ》って、精《くわ》しく新教神学発展の跡を辿《たど》って述べていた。自分の専門だと云っている歴史の事に就いても、こんなに力を入れて書いてよこしたことはないのに、どうしてハルナックの事ばかりを、特別に言ってよこすのだろうと子爵は不審に思って、この手紙だけ念を入れて、度々読み返して見た。そしてその手紙の要点を掴《つか》まえようと努力した。手紙の内容を約《つづ》めて見れば、こうである。政治は多数を相手にした為事《しごと》である。それだから政治をするには、今でも多数を動かしている宗教に重きを置かなくてはならない。ドイツは内治の上では、全く宗教を異《こと》にしている北と南とを擣《つ》きくるめて、人心の帰嚮《きこう》を繰《
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