、その島より小さい島がある。石の多い、恐ろしい不毛の地と見える。黒い岩の群が絶え絶えにその周囲に立つてゐる。
 遠い分の島から岸までの間の大洋の様子は、まるで尋常の海ではない。丁度眺めてゐる最ちゆうに海の方から陸の方へ向けて随分強い風が吹いてゐた。この風が強いので、島よりずつと先の沖を通つてゐる小舟が、帆を巻いて走つてをるのに、その船体が始終まるで水面から下へ隠れてゐるのが見えたのである。それなのに島から手前には尋常の海と違つて、ふくらんだ波の起伏が見えないのである。そこにもこゝにも、どつちとも向きを定めずに、水が短く、念に、怒つたやうに迸り上がつてゐるばかりである。中にはまるで風に悖《さから》つて動いてゐる所もある。泡は余り立たない。只岩のある近所だけに白い波頭が見えてゐる。
 その男がかう云つた。
「あの遠い分の島をこの国のものはウルグと申します。近い分の島をモスコエと申します。それから一哩程先に北に寄つてゐるアンバアレン群島があります。こちらの側にあるのがイスレエゼン、ホトホルム、ケイルドヘルム、スアルヱン、ブツクホルムでございます。それからモスコエとウルグとの間の所にあたつてオ
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