感をいだいている助役の手許にだって山ほど集まっていよう)、ただそのために例の奴を番犬の如くに考えて頼っている一部の連中、信用組合員や農会の連中、あいつらが何というかだ。――瘤がかつて村の金庫を腕力で護ったと同じように、現在、彼らは自分達の金庫を名村長瘤の存在によって守ってもらっていると信じているんだ。
 だが、いかに瘤の存在によってそれが守られていようと、要するに時日の問題でなければなるまい。無力文盲に近い貧農たちの無けなしの土地を整理して、上部の方を辻褄合せようと、組合の内部は依然として火の車なのであり、いや、ますますそれが悪化していっているのだ。碌な事業はせぬ、それで取るべき給料はきちんきちんと取っている、では……三年か五年か、それは分らないが、いずれにしても瘤にも寿命というものはあろう、いや、名村長、大もの[#「大もの」に傍点]の貫禄はいまや年一年減少しつつあると考えてもあえて間違いではないであろう。
 根こそぎ町の金持のところへこの村が持って行かれるなら、一日も早く、きれいさっぱりと持ち去られた方がよくはないのか。そして何もかも新しく、これからやり直すのだ。村を再建するんだ。

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