」
「なんだかよ、俺ア知らねえ。――この頃、旦那ら、出かけてばかりいらア、瘤の代理ばかり仰せつかっで……」
すると、「本当かい、あんちゃん」と森平は変ににやにやして、「君んところのダンボの左頬にも瘤がこの頃出来かかったって……」
「俺ら知らねえ。」
「知らねえ……よく見てみろ。なんでも出来かかっているっちう話だから。」
「そんなことあるめえ。」
「だってよ、さっきも、どこへ行くか……ッて聞いたら、なアに……医者だ、なんて、※[#「臣+頁」、第4水準2−92−25]を外套でかくして行けんからよ。」
「瘤なんどばかり殖えて、この村も始末にいけねえとよ、はア、……」
店のおかみが笑うと、助|阿兄《あにい》もどうやら理解したらしく、「なんだ、そんなことか……」ときまり悪そうにつぶやいて、そそくさと店を飛び出して行った。
底本:「犬田卯短編集 一」筑波書林
1982(昭和57)年2月15日第1刷発行
入力:林 幸雄
校正:松永正敏
2007年12月8日作成
青空文庫作成ファイル:
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