くては……と抗議してみたが、いまはそんな暇はない。あとで繩を入れて見て、それだけなければ『買い上げ』てやると突っぱねられ、結局、田と畑の持つそれらの不毛地を、彼は五十円ほどに査定せられなければならなかった。
村人の中には百円以上の査定を突きつけられて不平をこぼすものもあった……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………。……だが、よくよく考えてみると、それは他人ごとではなかった。もし他村の金持、いや自分の村の金持にしても同様だが、そういう訳の分らぬ連中に落札されてしまって、その畦や畑境へ無茶な植林でもされた日には……何となれば連中とて今度は租税が出るのだから、ただ放置するはずがない。しかしそれこそ取りかえしのつかぬことだった。それでなくてさえ日光に恵まれないこの地方である。半歳を雪の下に埋もれて過ごす耕地のことで、ただ一本のひょろひょろ松のかげ[#「かげ」に傍点]でも、直ちにその秋の収穫に影響した。いきおい、借金しても落札しなければならぬ運命におかれていたのだ。小作地でさえそれは免れられぬ。もし地主に一任しておく
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