荒蕪地
犬田卯

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)詰《なじ》られる

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)こたつ[#「こたつ」に傍点]櫓
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     一

「……アレは、つまり、言ってみれば、コウいうわけあいがあるンで……」
 戦地から来た忰の手紙に、思いきって、いままで忰へ話さずにいたことを余儀なく書き送ろうと、こたつ[#「こたつ」に傍点]櫓の上に板片を載せ、忰が使い残して行った便箋に鉛筆ではじめたが、儀作は最初の意気込みにも拘らず、いよいよ本筋へかかろうとするところで、はた[#「はた」に傍点]と行詰ってしまった。……あれ[#「あれ」に傍点]をどんな風に説明したら、うまく、納得がゆくものであろうか。
 人手がなくて困るとか、肥料が不足でどうとか、かれこれ言われながらも、事変がはじまっていつか足かけ三年、二度目の収穫が片づく頃になると、心配していたほど、それほど米がとれなくもなかったし、人手不足もどうやら馴れっこになってしまった。事実、野良仕事など、やりよう一つでどうにでもなったし、肥料などに至っては、幾キロ施したから、それで
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