ていたのだそうである。私は如何にも音のことに就いて教育されている学校だと思って、感心したことがある。
盲学校の事について、思い出すのは、或る日、盲学校で演奏会があった。その時、片山校長が、「盲人と音楽」ということに就いて話された。校長の話が終ると聞いていた職員や、盲人の生徒たちが、感激のあまり、先生先生といって校長の傍に近よって行った。私の察するところでは、校長が盲人たちに突き当たられる不安があったらしく、それに元来盲人は感覚の強いものであるという点を思われてか、一々近よって来た盲人たちを、自分の手で触れて行かれた。実はそういう私も手で触れられた一人であった。
この場の光景は私には見えなかったが、私の想像では、校長が職員や盲人の生徒の群がる中を泳ぐようにして、進んで行かれたのではないかと思った。そして、手を触れて貰った職員や生徒たちは、さぞ校長を懐しく思ったことであろうと思った。
底本:「心の調べ」河出書房新社
2006(平成18)年8月30日初版発行
初出:「雨の念仏」三笠書房
1935(昭和10)年2月18日
入力:貝波明美
校正:noriko saito
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