がたい感じがした。私は或るレコードで、バッハのカンタータを聴いたことがあるが、そのカンタータのコーラスが、わざわざ少女を集めてコーリングしたので、曲もそうであるが、普通のコーラスとは別の感じがして、私はその演奏に打たれたことがあった。私はその時、これから少女たちの声を入れたものを作曲してみたいと思った。
音楽学校の講師になって間もなく、盲学校の方にも頼まれて、掛けもちで行くことになった。初めて盲学校の授業があるので、教官室で時間の来るのを待っていたら、どの先生も、どの先生も、とてつもないひどい足音をさせて歩いていた。テーブルの上のものはガラガラ音がするし、どうも大股でわざと音を立てているらしい。建物がしっかりしているらしいからよいようなものの、根太が抜けやしないだろうかと思われた。
私はどういう訳でこんなひどい音をさすのかと思ったが、それは生徒が盲人なので、大きな音をさせて歩けば、自然に生徒がよけて通る仕掛けになっていたのだそうである。或る先生の如きは腰に鈴をつけて、生徒がぶつからぬようにしていた。
それで生徒の方でも、いつの間にかその歩く足音で、あれは何先生だということを感別し
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