レコード夜話
宮城道雄
メニューヒンの演奏会を日比谷の公会堂へ聴きに行って、あとで楽屋へ挨拶に行くと、握手をしながら how do you do と言われた。その声が高い若々しい調子に聞こえた。帰ろうとすると、もう一度握手されたので私は嬉しかった。
そのせいか、氏のレコードが集めたくなって、いろいろ買い求めた。そして、氏の写真のついたアルバムへ手さぐりで一枚ずつレコードをはめていった。
幸いのことに、つい先日ビクターから勤続二十五年以上の御褒美に小型電気蓄音機を貰ったので、それで聴いて楽しんでいる。
私はレコードを一人で静かに聴くのが好きで、人の寝しずまった夜中などに鳴らすことがよくある。電気蓄音機は調節が出来てよいが、手捲の蓄音機でオーケストラなどを鳴らすと、辺りへひびきわたるので風呂敷をかけたり、蒲団をかぶせたりして音を弱くして聴くのである。
ある夜、私は変奏曲を作ってみたいと思っていたので、参考に聴きたいと思ってレコードをいろいろ探した。私にわかるように点字で書いてあるのもあるがそうでないのが多いので、そういうのはレコードやアルバムの手ざわりや、形などで探りあてたり、
次へ
全5ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮城 道雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング