さず走り歩いて見て居つた。其当時役者で好きなのは矢張今の歌右衛門さんであつた。私は競馬の一番嬉しい勝ちやうをしたのは板橋の競馬であつた、第十一競馬が新馬競走で之を見て居ると、席に遅うなるので諦めて帰り掛ると扇を拾つた。そこから又見徳と云ふ心を出して扇を拾つたからオ[#「オ」に傍点]の附く馬を買はうと出馬の名前を見ると、大山と云ふ馬が出た。何心なく扇を拡げて見たら大山大将の写真が這入つて居つた。此時はもう買はぬ内から取れたやうな気持がした、で大枚二枚を買ふて見た。すると端を切つ放しで物の見事に一着を取つた。配当は六百何某であつたよつて二枚買ふて、千二百何某の金を取つて、あゝ大威張で五人乗りの車に乗つて宅へ帰つたことがある。
それから間もなく馬券と云ふものが廃止になつた。よつて暫くは無沙汰して居つた、すると公認競馬で、馬券でなく商品券と云ふ塩梅にして十円の入場料で、二円券を五枚づつ呉れることになつたので、それで又夢中になつて行つて居つた其頃には取敢ず御客も今のやうに這入つて居らぬので、競馬場も閑静なものであつたが、何時しか又馬券が復活すると云ふ噂が立つと同時に、追々と又競馬が盛になつて来
前へ
次へ
全18ページ中4ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
桂 小南 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング