場ほど……色々競馬場の悪口はありませうけれども……御客の不便を顧ぬ所はないでせう。現に雨が降つて歯の附いた下駄がいかぬので、それに和服の人が多いから皆苦心する。又私等商売柄洋服を着ない、それに私の洋服は映らぬのです。前に競馬に行く為に洋服を作りました。映るにも映らないにも、余程無恰好です。家内やら子供はお父さんもう洋服着て行くなら、私一緒に行かないし若しも一緒に行つても別々に居ませうよ。見理ないから……、と云ふわけ、競馬場でも笑はれますよ。あれや小南や、服の映らぬ人ねと云はれるから雨の降つた日だけ服着て行つて居つたのです。去年の秋でしたかね、去年の秋は雨が降りましたからね、此雨では着物では仕方がないから服を出して呉れと云ふた。所が家内が二円で屑屋に売つちまひましたと云ふ、拵へる時は六七十円掛つた服でそれをたつた二円で売つてしまつた。
またクラブに対する不平は、御客の方から云はしますと、第一番の請求は二百円で制限してあるのが一番非道いです。よつて今迄の馬券法の時分には十人の中で三四人もまあ大袈裟に云えば、自殺するとか、身代を漬すと云ふ人があつた代りに、一人や二人成金が出来たりしましたが
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