、今度の此方法でやられたならば、全部競馬ファンは肺結核に罹つたやうなもので、ぢり/\殺されるのです。そんな不服ならば来ぬでも宜いではないか、とクラブの方で云ふでせう。所が、是が煙草好きが煙草の値が上げられたのと一緒で、仮に敷島が三十銭になつても、非道いことしやがると云つても止めることは出来ぬ。矢張りぶつ/\云ひながらそれを飲むのと一緒で、競馬ファンも其通りで、クラブが不親切な残酷な暴利過ぎると云ひつゝ止めることが出来ぬ。それですから総ての人寄せの中で、私に云はせれば一番競馬クラブと云ふものは横暴でせうね、矢張社団法人と云ふのを鼻に掛けて威張つて居るのでせう。
馬も良くなつて来ましたし、騎手も上手になつて来ました。能く八百長八百長と云ふ声が出ますけれども、障碍と競馬速歩には八百長がないにも限りますまいが、駈出には断然八百長がないと思ひます。それでもあんな弱い馬を騎手が十枚も買つて勝つたではないか、八百長だと云ひますが、なあに、騎手の方では馬の調子も知つて居るし、外の馬と比べて、今日の競馬は事に依ると勝つぞと調べが附いて居る。御客の方では何時も勝つた馬でないからあんなものが勝つべきものでないと云ふのが間違つて居る。馬屋筋を調べますと、一生懸命に馬屋筋は穴ばかり探して買ふて居るから大抵得して居ります。能く御客が聞いて居りますよ、騎手なんかに……、番組見せて、騎手は大体は分つて居る。十頭馬が出ましても二つ位目を着けて居る、是と是だ是が出れば十分で是が出れば穴だ、それ位の見当は附けて居ります。御客が皆買ふ馬が駄目で、意外な馬に騎手が目を着ける時がある。
八百長でないのです。それが此競馬の勝つべき馬なんだと云ふけれども、こそ/\厩筋で買ふから八百長と云ふだらうけれども、公然と買つたら、御客もそれに附いてしまふから配当がなくなつてしまふ。それですからこつそり分らぬやうに買ふ。
それから馬主と騎手の云々はあるのです。速いことには今日は馬が傷ついても宜いから出せるだけ出して呉れと註文する、場合に依ると今日は余り責めぬでも宜いよと云ふ。それはあるのです、詰り其日に楽をさして置いて、そして此処と賞金の多い処でひよつこり出さして、それで賞金でも多く取り、馬券も余計買はうと云ふことになる配当が好くなりますからね。
現に去年の七月の中山の競馬で、松緑と云ふ馬を持つて居る人と心易いのです
前へ
次へ
全9ページ中7ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
桂 小南 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング