エゾハマハタザオ、ウシノケグサ、エゾオオバコ、ツメクサ、ノコギリソウ、イワレンゲなども、この辺に沢山あるし、中にも眼に付いたのは、シロヨモギの色が殆んど霜のように白かったのである、こんな草の生えているその下は、直ぐに波に打たれているのである、岩の上部には、オタカラコウ、ツタウルシ、シロワレモコウ、エゾオトギリなどが多く生えていて、ガンコウランもこの辺に生じているのを見た。
 先ずこの日はこの位の採集で一同宿に帰って、晩食後は自分はこの採集品の整理に忙がしかったので、他の諸君のことはよく覚えていないが、多分利尻山登山の準備に就て心配せられたであろうと思う、しかしこの島の人に尋ねても、利尻山は信心にて詣る人が日帰りに登るだけのことで、道ももとより悪いし、山上に泊るべき小屋などのある訳もないとのことで、何分にも宿屋では山の上の詳しい模様は知ることが出来なかった。
 九日はなお前日に続いて登山の用意をすることになった、一体はこの日早朝から山に向って踏み出すべきはずであったが、天気模様が悪いので、今一日滞在して充分に用意をしたら宜《よ》かろうということで、結局雨のために一日滞在することになった、
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