単梗花になっているものが無数にあるが、しかし中にまじって花梗に枝をうち、はっきりした聚繖花序をなしているものに出逢うことはそう珍らしいことではない。誰でも少し注意すれば早速にこれを見出し得ること請け合いである。
この花梗に分枝していないものを見ては誰でもそれが聚繖花序であることには気がつくまいが、花梗をよくよく注意して検してみると、梗の途中に一つの節がある。極く嫩い初期のときにはその節に早落性の苞があるから、推考することに鋭敏な人ならば、その花梗にさらに枝梗が出るはずだと想像することは敢て難事でもあるまいが、今日までそう考えた人は誰もなかったのであろう。
茶にこの聚繖花序の現われるのはまことにこの上もない貴重なかつ大切な事実で、これはこの茶の属、すなわち Thea 属[#「属」に「ママ」の注記]をして近縁のツバキ属すなわち Camellia 属[#「属」に「ママ」の注記]と識別する主要な標徴であることは確かに銘記に値する。すなわち常に無梗の単生花を出すツバキ属、そして時々聚繖花を出すチャ属とは自然にその間に一目瞭然たる不可侵の境界線を画するものである。要するにこの両属の主要な区分点
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