れば、もしそこを保護してそのクリを伐らなかったならば、たちまちその三度グリたる現状態が見られなくなるからであった。そしてこんなクリはやはり野に置けでないとその天真を失ってしまうことになる。
右のような小木のクリを南京栗《ナンキングリ》というと伊藤|伊兵衛《いへい》の『地錦抄付録《ちきんしょうふろく》』に出ている。一体姿の小さいものを南京鼠のように南京と呼ばれる。三度栗も樹が小さいからそれでこの名がある。
上のいわゆる三度グリと同様のものは、春に山を焼く場所にはどこにも見られ、敢えて珍らしいものではない。私は先年肥後葦北郡水俣の山地でもこれを見たのだが、同地にも普通に多く生長して多数な毬彙《イガ》を着けていた。その中に特にその毬彙が紫色を呈したものがあって私の眼を惹いた。そこでそれを採集し、それにイガムラサキの新和名と Castanea crenata Sieb[#「Sieb」は斜体]. et Zucc[#「et Zucc」は斜体]. forma purpurea Makino[#「Makino」は斜体](Burs purple)の新学名をつけておいた。
三度グリについて小野|蘭山
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