故ニサヽユリト呼ブ五月茎梢ニ花ヲ開クコト一二萼年久シキ者ハ五六萼ニ至ル皆開テ傍ニ向フ六弁長サ四寸許弁ノ本ハ聚テ筒ノ如ク末ハ開テ反巻ス白色ニシテ微紫花後実ヲ結ブ形卵ノ如ク緑色熟スル時ハ内ニ薄片多シ即其子ナリ其根ハ白色ニシテ弁多ク並ビ重リテ蓮花ノ如シ食用ニ入ルユリネト呼ブ
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土佐高岡郡佐川町付近の山地にササユリの一変種がある。普通のササユリよりは小形であるが、土地ではやはりササユリと呼んでいる。その花の咲いている時分に山村の人が根を連ね十本くらいを一束として市中に売りに来ていたが、今日はどうだろうか。その根を薬用食にせんがためで、これを食すると痰が取れるといっている。これは私の子供の時分のことであったから今からざっと七十年余り[#「七十年余り」に「ママ」の注記]も前のことに属するが、今日では最早そういうことは昔話になっているのかも知れない。これはササユリの小形な一変種で葉緑がやや白く、私はこれをフクリンササユリと名づけておいたが、ヒメササユリと別称しても悪くはない。
岩崎灌園《いわさきかんえん》の『本草図譜《ほんぞうずふ》』巻之四十八に、ササユリの一名として、
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