。
従来日本の学者達は百合を邦産のササユリにあてているが、それは無論誤りであって、ササユリはけっして百合そのものではなく、元来このササユリは中国には産しないから当然中国の名のあるはずはないではないか。
このササユリは関西に多いユリで、関東地方ではいっこうに見ない。一つにサユリともヤマユリ(Lilium auratum Lindl[#「Lindl」は斜体]. のヤマユリとは別種で同名)ともいわれる。その学名は従来 Lilium japonicum Thunb[#「Thunb」は斜体]. が用いられていたが、この名前づらが他のユリと重複するというので、当時京都帝大の小泉源一《こいずみげんいち》博士がかつてこれを Lilium Makinoi Koidz[#「Koidz」は斜体]. と改訂して発表したことがあった。
小野蘭山《おのらんざん》の『本草綱目啓蒙《ほんぞうこうもくけいもう》』(享和三年(1803)刊行)にそのササユリの形状を次のように書いてあって、すこぶる分りやすいからここに転載する。
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春旧根ヨリ生ジ円茎高サ三四尺直立ス葉ハ竹葉ノ如クニシテ厚ク光アリ
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