vとある。すなわちこれが岡トトキの名を伴った桔梗をアサガオだとする唯一の証拠である。人によってはこれはただこの『新撰字鏡』だけに出ていて他の書物には見えないから、その根拠が極めて薄弱だと非難することがあるが、たとえそれがこの書だけにあったとしても、ともかくもそのものが儼然とハッキリ出ている以上は、これをそう非議するにはあたらない。信をこの貴重な文献においてそれに従ってよいと信ずる。
 秋の七種《ななくさ》の歌は著名なもので、『万葉集』巻八に出て山上憶良《やまのうえのおくら》が咏んだもので、その歌は誰もがよく知っている通り、「秋の野《ぬ》に咲《さ》きたる花を指《およ》び折《を》り、かき数ふれば七種の花」、「はぎの花を花《ばな》葛花《くずばな》瞿麦《なでしこ》の花、をみなへし又|藤袴《ふぢばかま》朝貌《あさがほ》の花」である。この歌中のアサガオを桔梗だとする人の説に私は賛成して右手を挙げるが、このアサガオをもって木槿すなわちムクゲだとする説には無論反対する。
 元来ムクゲは昔中国から渡った外来の灌木で、七|種《くさ》の一つとしてはけっしてふさわしいものではない。また野辺に自然に生えているも
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