る。
右によると、イタヤの名もメイゲツの名と同じく、Acer mono Maxim[#「Maxim」は斜体]. の品類の名ではないから、この類からイタヤカエデの名を取り消さねば名称学上正しいものとはなりえない。ゆえにこの Acer mono Maxim[#「Maxim」は斜体]. 一類の品はこれをツタモミジとかトキワカエデ(これは常磐すなわち常緑の意味ではなく、赤く紅葉しない意味だ、すなわちこの品は黄葉して赤色とはならない)とかの従来からある名にすればそれでよろしい。
従来山人が実地に呼んでいるものに、シロビイタヤ(白皮イタヤ)、アカビイタヤ(赤皮イタヤ)、クロビイタヤ(黒皮イタヤ)の三つがあるが、これはみな Acer mono Maxim[#「Maxim」は斜体]. 中の品である。この mono 種にはいろいろの品があるので、その品によって樹皮の色が違うのであろう。ゆえにこれはどれがどれ、どれがどれと突きとめる必要があるのだが、林学の方で果たしてそれが判っているだろうかどうだろう、林学関係の学者に聴きたいものだ。
今日植物学界では北海道に産する(本州にもある)Acer Miyabei Maxim[#「Maxim」は斜体].(この種名 Miyabei 宮部金吾《みやべきんご》博士を記念するために名づけたものだ)を誰がいったか知らんが、クロビイタヤと呼んでいる。しかし上に書いたようにこのクロビイタヤの名はいわゆるイタヤカエデの一品を呼んだものにほかならないから、何か別の和名に改める必要がある。そこで私は先きにこれをエゾイタヤと変更し、これを我が『牧野日本植物図鑑』に書いておいたが、しかしまことに気持ちよい爽やかな図が Sargent 氏の Forest Flora of Japan に出ている。この書には日本の飜刻版がある。
三度グリ、シバグリ、カチグリ、ハコグリ
諸国に往々三度グリと呼んでいるクリがあって、その土地の名高い名物となっていることがある。すなわちそれは一年に三度実が生るというのである。実際そんなクリがあるにはあるが、じつをいうと何も一度、二度、三度と区切って実が生るのではなく、夏から秋まで連続してその実が着くのである。
かく呼ばれている三度グリについては、私の生国土佐にもその例があって『土佐国産往来《とさこくさんおうらい》』にも「三度生
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