よい。植物学的にいえばバナナは下位子房からなっているから、その食う部分は茎からなっている花托であるといえる。ゆえにバナナはつまるところ茎を食っているとの結論に達する訳だ。
オランダイチゴの食う部分は花托だから、じつをいえば変形せる茎を食っているのである。その粒のような本当の果実は犠牲となりお供して一緒に口へはいるのである。果実の食う部分を注意して見るとなかなか興味がある。上位子房からの果実よりは下位子房からの果実には種々面白味が多い。
梨《ナシ》、苹果《リンゴ》、胡瓜《キュウリ》、西瓜《スイカ》等の子房
ナシ、リンゴ、キュウリ、スイカなどはみな植物学上でいう下位子房(Inferior ovary)を持っていて、その子房が成熟して果実となっている。ゆえにその果実はウメ、モモ、カキ、ミカン、ブドウ、ナスビなどのように純粋な果皮を持った果実とは違って、その子房は他の助けを借りてそれと仲よく合体したものである。つまり瘤付きである。ゆえにその果実の内部の中央の方は本当の子房からなっているが、外側の方はその付属物である。そしてその食える部分はすなわちこの付属物であって、中央の子房はキュウリ、スイカなどは軟くて全部一緒に食えるが、ナシ、リンゴなどは食うにしてもそれが食えないのである。
これらナシ、リンゴ、キュウリ、スイカなどの実は、上述の通り下位子房で成ったもんだからその周囲を花托で取り巻き、それが中の子房に合体している。そしてその花托は茎の先端であるから、ナシ、リンゴなどの食う部分は、つまるところこの茎であると結論せねばならん理屈だ。
学校で植物学を学んだ人達はこんな事柄はすでに承知している筈だろうから、今さら私が上のようなことを喋べると、時世おくれだと笑われるかも知れんが、しかし今世間でナシ、リンゴ、スイカ、カボチャなどを食う大人達、婦人連が果たしてこんな事実を先刻御承知かどうか、どうもそこまで一般が科学的になってはいないような感じがする。
グミの実
グミの類の花を見ると、花の下に子房のように見えるものがあるので、チョットそこに下位子房があると感ずるのだが、じつはそれは子房ではないのである。すなわちその子房らしいところは花の顔すなわち花被になっている萼《がく》の下に続く部の括びれたところで、それはやや質の厚い筒をなした花托なのである。すなわちそこが素
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