て旅行の安否を占ふ
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 この高野のマンネンソウは蘚類の一種で Climacium japonicum Lindb[#「Lindb」は斜体]. の学名を有するもので、国内諸州の深山樹下の地に群生している。そして高いものは三寸ほどもある。
 岩崎灌園《いわさきかんえん》の『本草図譜《ほんぞうずふ》』巻之三十五に二つのコウヤノマンネングサの図が出ているが、その上図のものはハゴノコウヤノマンネングサ(一名フジマンネングサ、コウヤノマンネングサモドキ、ホウライソウ)すなわち Climacium ruthenicum Lindb[#「Lindb」は斜体].(=Pleuroziopsis ruthenica[#「Pleuroziopsis ruthenica」は斜体] Lindb.)で、その下図のものが本当のコウヤノマンネングサすなわち Climacium japonicum Lindb[#「Lindb」は斜体]. である。大沼宏平君が同書の学名考定でこのコウヤノマンネングサの図をミズスギすなわち Lycopodium cernuum L[#「L」は斜体]. と鑑定しているのはまさしく誤鑑定で、その図の枝の先端が黄色に彩色してあるのは、これは疑いもなく枝先きが枯れたところを現わしたもので、それはけっしてその胞子穂ではないのである。
 ズット以前のことであるが、すこぶる頭の働いた人があって、このコウヤノマンネングサを集め、その乾いたものを生きたときのように水で復形させ、これを青緑色の染粉で色を着け、これを一束ねずつ小さい盆栽とし、それを担って諸国を売り歩き大いに金を儲けたことがあった。そのときその行商人の口上はなんといったか今は忘れた。
 近代の学者は時とすると、この草をコウヤノマンネンゴケとしてあるが、じつはこれはコウヤノマンネングサが本当である。またコウヤノマンネンソウとしたものもある。

  コンブとワカメ

 日本では中国の昆布《コンブ》の漢名をもととして、今から一千余年も前の昔にはこれをヒロメあるいはエビスメ(深江輔仁の『本草和名』)と呼び、現代ではその昆布を音読してコンブといってそれが通称となっている。そしてこのコンブは海藻 Laminaria 属[#「属」に「ママ」の注記]中の種類を総称していることになっている。じついうとこの中国人の書物に書
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