の色は少し赤みがかっていたように感じ、あえて青白いような光ではなかった。
 次は、これと前後した頃であったと思う。やはり、暗い闇の夜に高知から郷里に向かっての帰途、岩目地《いわめじ》というところの低い岡の南側を通るように道がついている。この岡のところに林があって、そこに小さい神社があり、土地の人はこれを御竜《おたつ》様と呼んでいる。この神社の下がすなわち通路で、これは国道から南に少し離れた間道である。そしてこの道の南方一帯が水のある湿地で、小灌木や水草などが生え繁って田などはなく、またもとよりその近辺には一軒の人家も見えず、人家からはだいぶ隔たっている淋しい場所で、南東には岡があり、その麓に小さい川が流れて、右の湿地を抱いている。
 ある年の夏、暗い夜の三時か、四時頃でもあったであろう。私は御竜様の下の道からふと向うを見ると、その東南一町ほどの湿地、灌木などの茂っている辺にごく低く、一個の静かな火が見えていた。それは光の弱い火できわめて静かにじーっと沈んだようになっていた。私はこれを一つの陰火であったと今も思っているが、そこはよくケチビ(土佐では陰火をこういう)が出るといわれている地域
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