わた見せるあけびかな」という句があった。これは自分の拙吟だが「なるほどと眺め入ったるあけび哉」、「女客あけびの前で横を向き」これはどうだと友達に見せたら、そりゃー川柳へ入れたらよかろうと笑われた。
 わが日本にはふつうあけびに二種(いま別にあいの子の一種があれど)あって、一般にはこれらを通じてあけびといっている。今日の植物学界ではその中の五葉のものを単にあけびと称え、他の三葉のものをみつばあけびと呼び、かようにそれを二種に区別している。
 右のあけびもみつばあけびも植物学上からいえば、共にその蔓が左巻きをしている纏繞藤本で、すなわち灌木が蔓を成したもので、それはふじなどと同格である。葉は冬月落ち散り、掌状複葉で長き葉柄を具えて互生し、花は四月頃に房をなし雄花雌花が同じ穂上に咲き、花には紫色の三萼片のみあって花弁はなく、雄花には雄蕋《おしべ》があり雌花には雌蕋《めしべ》があって、この雌花は雄花より形が大きく、かつ花の数が少ない。
 果実はみつばあけびの方がその皮の紫が美麗でかつ形が大きく、食用にはこの方がよい。
 市中に売っているあけびの「バスケット」はどのあけびで作るか。通常これをあけ
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