メリカに行った時には小さな船で(咸臨丸を指す――著者)海上三十七日も掛《かか》ったというのが今度のコロラドは四千トンの飛脚船《ひきゃくせん》、船中の一切万事実に極楽世界で二十二日目にサンフランシスコに着いた」。
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 まずこれでいい。ところで引続いて、
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「着《つい》たけれども今とは違ってその時分はマダ鉄道のないときで、パナマに廻らなければならぬからサンフランシスコに二週間ばかり逗留《とうりゅう》して、そこで太平洋汽船会社の別の船に乗替えてパナマに行って蒸汽車に乗てあの地峡を踰《こ》えて向側に出てまた船に乗《のっ》て丁度《ちょうど》三月十九日にニューヨークに着き……」。
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 私はこれを読みながら、一八五〇年にマルクスが書いた評論のことを思い合わせた。
 カリフォルニアの黄金狂時代を契機として展開された一連の事情は、「いまやニューヨークおよびサンフランシスコ、サンジュアン・ド・ニカラグア、レオン・チャグレス(パナマ地峡の向側の当時の港)およびパナマ」を新時代の世界商業および交通の重心地帯とするにいたるだろう――と彼は述べ
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