工、満三カ年と九カ月を費して、めでたく進水の運びがついた。
 トン数一八、九一四(それまでの最大鉄造船は三、三〇〇トン)、排水トン数にして二七、〇〇〇トン、長さ六八〇フィート、幅八二・五フィート。一万トンの石炭と六千トンの貨物を積み、四千人の船客を収容し、軍隊なら一万人を輸送することができるはずである。
[#「「グレート・イースタアン」横断面」のキャプション付きの図(fig50361_01.png、横383×縦599)入る]
 たんに大きい、だからまた補助金なしで算盤がとれる、というだけでなく「グレート・イースタアン」は鉄造船技術史上の一つの画期的存在でもあった。なぜならこの船ではじめて理想的な「沈まない船」ができた――いわゆる「ダブル・スキン」がはじめて応用されたのである。
 吃水線《きっすいせん》以下と上甲板とが密房組織の二重張になった。何でもない工夫のようだが、技師ブランネルが、有名なメネー管橋の橋梁工事の経験から案出したものである。外壁が万一破れても、けっして船内には浸水しない。だが万々一内壁まで破れるような椿事《ちんじ》が起った場合には?――というので、さらに、セカンド・デッ
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