脹《トリプル・エキスパンション》ないし四段膨脹《カドラブル・エキスパンション》機関へ、タービンおよびギア・タービン機関へ、内燃機関へ――ここで現在の時点が争われている。
 複式機関の発明からタービン機関船までの発展はわずか三十年で行われたが、汽船史上の最も興味のある時代はむしろ、フルトンのクレルモント号の進水(一八〇七年)から数えて六十年間にわたる単式機関船時代にある。あらゆる技術上の驚異的成果にもかかわらず、単式機関船時代には、経済的に、帆船にたいする勝利はついに不可能に終ったのである。
 これは汽車のはなしだが、スティーヴンソンの最初の試験的な機関車がキリングウォース炭坑で一年間石炭を運搬したときの算盤《そろばん》は、馬に牽《ひ》かせる場合の費用とまさに同じだった。技術的には進歩だが経営経済の上では何の足しにもならなかった。機関車の食糧節限――一馬力当りの石炭消費率の減少を可能にしたスチーム・ブラストの発明(スティーヴンソン、一八一五年)がはじめてストックトン=グーリントン鉄道(一八二五年)を旅客用にも貨物用にもひとしく「経済的」に完成させたのである。
 陸のスチーム・ブラストに対
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