歌麿懺悔
江戸名人伝
邦枝完二
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)師匠《ししょう》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)当時|彫師《ほりし》の
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)てっぽう[#「てっぽう」に傍点]
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一
「うッふふ。――で、おめえ、どうしなすった。まさか、うしろを見せたんじゃなかろうの」
「ところが師匠《ししょう》、笑わねえでおくんなせえ。忠臣蔵の師直《もろのお》じゃねえが、あっしゃア急に命が惜しくなって、はばかりへ行くふりをしながら、褌《ふんどし》もしずに逃げ出して来ちまったんで。……」
「何んだって。逃げて来たと。――」
「へえ、面目《めんぼく》ねえが、あの体で責《せ》められたんじゃ命が保《も》たねえような気がしやして。……」
「いい若え者が何て意気地《いくじ》のねえ話なんだ。どんな体で責められたか知らねえが、相手はたかが女じゃねえか。女に負けてのめのめ逃げ出して来るなんざ、当時|彫師《ほりし》の名折ンなるぜ」
「ところが師匠、お前さんは相手を見ねえからそんな豪勢な口をき
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