手《て》は、名匠《めいしょう》が毛描《けが》きでもするように、その上《うえ》を丹念《たんねん》になぞって行《い》った。
眼《め》、口《くち》、耳《みみ》。――真白《まっしろ》に塗《ぬ》りつぶされたそれらのかたちが、間《ま》もなく濡手拭《ぬれてぬぐい》で、おもむろにふき清《きよ》められると、やがて唇《くちびる》には真紅《しんく》のべにがさされて、菊之丞《きくのじょう》の顔《かお》は今《いま》にも物《もの》をいうかと怪《あや》しまれるまでに、生々《いきいき》と蘇《よみがえ》った。
おせんは、じッとその顔《かお》に見入《みい》った。
「吉《きち》ちゃん。――もし、吉《きち》ちゃん」
次第《しだい》におせんの声《こえ》は、高《たか》かった。呼《よ》べば答《こた》えるかと思《おも》われる口許《くちもと》は、心《こころ》なしか、寂《さび》しくふるえて見《み》えた。
「――あたしゃ、これから先《さき》も、きっとおまえと一|緒《しょ》に、生《い》きて行《ゆ》くでござんしょう。おまえもどうぞ、魂《たましい》だけはいつまでも、あたしの傍《そば》にいておくんなさい。あたしゃ千|人《にん》万人《まんにん
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