末《しまつ》。ちっとも速《はや》く、葺屋町《ふきやちょう》へ行《い》っとくンなせえやし」
「親方《おやかた》、その駕籠《かご》を、待《ま》たせといておくんなさい」
「合点《がってん》でげす」
おせんの声《こえ》は、いつになく甲高《かんだか》かった。
四
人目《ひとめ》を避《さ》けるために、わざと蓙巻《ござまき》を深《ふか》く垂《た》れた医者駕籠《いしゃかご》に乗《の》せて、男衆《おとこしゅう》と弟子《でし》の二人《ふたり》だけが付添《つきそ》ったまま、菊之丞《きくのじょう》の不随《ふずい》の体《からだ》は、その日《ひ》の午近《ひるちか》くに、石町《こくちょう》の住居《すまい》に運《はこ》ばれて行《い》った。
が、たださえ人気《にんき》の頂点《ちょうてん》にある菊之丞《きくのじょう》が、舞台《ぶたい》で倒《たお》れたとの噂《うわさ》は、忽《たちま》ち人《ひと》から人《ひと》へ伝《つた》えられて、今《いま》は江戸《えど》の隅々《すみずみ》まで、知《し》らぬはこけ[#「こけ」に傍点]の骨頂《こっちょう》とさえいわれるまでになっていた。他目《はため》からは、どう見《み》ても医
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