我《けが》でもしたのではないかと、穴《あな》のあく程《ほど》じッと見詰《みつ》めながら、静《しず》かに肩《かた》へ手《て》をかけたが、いつもと様子《ようす》の違《ちが》ったおせんは、母《はは》の手《て》を振《ふ》り払《はら》うようにして、そのまま畳《たたみ》ざわりも荒《あら》く、おのが居間《いま》へ駆《か》け込《こ》んで行《い》った。
「どうおしだよ、おせん」
「お母《っか》さん、あたしゃ、どうしよう」
「まァおまえ。……」
「吉《きち》ちゃんが、――あの菊之丞《きくのじょう》さんが、急病《きゅうびょう》との事《こと》でござんす」
「なんとえ。太夫《たゆう》さんが急病《きゅうびょう》とえ。――」
「あい。――あたしゃもう、生《い》きてる空《そら》がござんせぬ」
「何《なに》をおいいだえ。そんな気《き》の弱《よわ》いことでどうするものか。人《ひと》の口《くち》は、どうにでもいえるもの。急病《きゅうびょう》といったところが、どこまで本当《ほんとう》のことかわかったものではあるまいし。……」
「いえいえ、嘘《うそ》でも夢《ゆめ》でもござんせぬ。あたしゃたしかに、この耳《みみ》で聞《き》いて来
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