ろう。こけ[#「こけ」に傍点]が秋刀魚《さんま》の勘定《かんじょう》でもしてやしめえし、指《ゆび》なんぞ折《お》ってる時《とき》じゃありゃァしねえぜ」
「いってえ、どうしたッてんだ、長《ちょう》さん」
「おめえ、まだ判《わか》らねえのか」
「聞《き》かねえことにゃ判《わか》らねえや」
「なんて血《ち》のめぐりが悪《わる》く出来《でき》てるんだ。――浜村屋《はまむらや》の太夫《たゆう》が、舞台《ぶたい》で踊《おど》ってたまま倒《たお》れちゃったんだ」
「何《な》んだッてそいつァおめえ、本当《ほんとう》かい」
「おれにゃ、嘘《うそ》と坊主《ぼうず》の頭《あたま》ァいえねえよ。――仮《かり》にもおんなじ芝居《しばい》の者《もの》が、こんなことを、ありもしねえのにいって見《み》ねえ。それこそ簀巻《すまき》にして、隅田川《すみだがわ》のまん中《なか》へおッ放《ぽ》り込《こ》まれらァな」
「長《ちょう》さん」
「ええびっくりするじゃねえか。急《きゅう》にそんな大《おお》きな声《こえ》なんざ、出《だ》さねえでくんねえ」
「何《なに》をいってるんだ。これがおめえ、こそこそ話《ばなし》にしてられるかい。
前へ 次へ
全263ページ中228ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
邦枝 完二 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング