訊《き》きてえことがあるから、つきあってくんねえ」
「へえ」
「びくびくするこたァありゃしねえ。こいつあこっちから頼《たの》むんだから、安心《あんしん》してついて来《き》ねえ」
 鬼《おに》七と呼ばれてはいるが、名前《なまえ》とはまったく違《ちが》った、すっきりとした男前《おとこまえ》の、結《ゆ》いたての髷《まげ》を川風《かわかぜ》に吹《ふ》かせた格好《かっこう》は、如何《いか》にも颯爽《さっそう》としていた。
 折柄《おりから》の上潮《あげしお》に、漫々《まんまん》たる秋《あき》の水《みず》をたたえた隅田川《すみだがわ》は、眼《め》のゆく限《かぎ》り、遠《とお》く筑波山《つくばやま》の麓《ふもと》まで続《つづ》くかと思《おも》われるまでに澄渡《すみわた》って、綾瀬《あやせ》から千|住《じゅ》を指《さ》して遡《さかのぼ》る真帆方帆《まほかたほ》が、黙々《もくもく》と千鳥《ちどり》のように川幅《かわはば》を縫《ぬ》っていた。
 その絵巻《えまき》を展《ひろ》げた川筋《かわすじ》の景色《けしき》を、見《み》るともなく横目《よこめ》で見《み》ながら、千|吉《きち》と鬼《おに》七は肩《かた》を
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