《りょう》といやァ、おいらのような貧乏人《びんぼうにん》は、まごまごすると、生涯《しょうがい》お目《め》にゃぶら下《さ》がれない大金《たいきん》だぜ。そいつをいかさま[#「いかさま」に傍点]だかさかさま[#「さかさま」に傍点]だかにつるさげて、物《もの》にしたと聞《き》いちゃァ、志道軒《しどうけん》の講釈《こうしゃく》じゃねえが、嘘《うそ》にも先《さき》を聞《き》かねえじゃいられねえからの。――相手《あいて》が橘屋《たちばなや》の若旦那《わかだんな》だったてえな、ほんまかい」
「おめえさん、それを聞《き》いてどうしようッてんだ」
顔《かお》をしかめて、春重《はるしげ》を見守《みまも》ったのは、金蔵《きんぞう》に兄《あに》イと呼《よ》ばれた左官《さかん》の長吉《ちょうきち》であった。
「どうもしやァしねえがの。そいつがほんまなら、おいらもちっとばかり、若旦那《わかだんな》に借《か》りてえと思《おも》ってよ」
「若旦那《わかだんな》に借《か》りるッて」
「まずのう。だが安心《あんしん》しなよ。おいらの借りようッてな、二十五|両《りょう》の三十|両《りょう》のという、大《だい》それた訳《わ
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