抱《しんぼう》が出来《でき》なくなったばっかりに、ここまで出向《でむ》いて来《き》た始末《しまつ》さ。そうと極《きま》ったら、どうか直《す》ぐに色《いろ》よい返事《へんじ》を聞《き》かせておくれ」
「ま、ま、待《ま》っておくんなせえやし。そんなにお急《せき》ンならねえでも、おせんの返事《へんじ》は、直《す》ぐさまお聞《き》かせ申《もう》しやすが、ここは道端《みちばた》、誰《だれ》に見《み》られねえとも限《かぎ》りやせん。筋《すじ》の通《とお》ったいい所《ところ》で、ゆっくりお目《め》にかけようじゃござんせんか」
「そりゃもう、いずれおまんま[#「おまんま」に傍点]でも食《た》べながら、ゆっくり見《み》せてもらおうが、まず文《ふみ》の上書《うわがき》だけでも、ここでちょいと、のぞかせておくれでないか」
「御安心《ごあんしん》くださいまし。上書《うわがき》なんざ二の次《つぎ》三の次《つぎ》、中味《なかみ》から封《ふう》じ目《め》まで、おせんの手《て》に相違《そうい》はございません。あいつァ七八つの時分《じぶん》から、手習《てならい》ッ子《こ》の仲間《なかま》でも、一といって二と下《さが》っ
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