《となりざしき》を気にしながら、更《さら》に声《こえ》を低《ひく》めた。
「怖《こわ》がるこたァねえから、後《あと》ずさりをしねえで、落着《おちつ》いていてくんねえ。おいらァ何《なに》も、久《ひさ》し振《ぶ》りに会《あ》った妹《いもうと》を、取《と》って食《く》おうたァいやァしねえ」
「あかりを、つけさせておくんなさい」
「おっと、そんな事をされちゃァたまらねえ。暗《やみ》でもてえげえ見《み》えるだろうが、おいらァ堅気《かたぎ》の商人《しょうにん》で、四|角《かく》い帯《おび》を、うしろで結《むす》んで来《き》た訳《わけ》じゃねえんだ。面目《めんぼく》ねえが五一三分六《ごいちさぶろく》のやくざ者《もの》だ。おめえやお袋《ふくろ》に、会《あ》わせる顔《かお》はねえンだが、ちっとばかり、人《ひと》に頼《たの》まれたことがあって、義理《ぎり》に挟《はさ》まれてやって来《き》たのよ。おせん、済《す》まねえが、おいらの頼《たの》みを聞《き》いてくんねえ」
「そりゃまた兄《あに》さん、どのようなことでござんす」
「どうのこうのと、話《はな》せば長《なげ》え訳合《わけあい》だが、手《て》ッ取早《とり
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