方《しかた》なしに松《まつ》五|郎《ろう》の前《まえ》に置《お》いた下絵《したえ》を、机《つくえ》の上《うえ》へ片着《かたづ》けて、かるく舌《した》うちをした。
「飛《と》んだところへ邪間《じゃま》が這入《はい》って、気《き》の毒《どく》だの」
「どういたしやして、どうせあっしゃァ、外《ほか》に用《よう》はありゃァしねえんで。……なんならあっちへ行《い》って待《ま》っとりやしょうか」
「いやいや、それにゃァ及《およ》ぶまい。話《はなし》は直《す》ぐに済《す》もうから、構《かま》わずここにいるがいい」
「そんならこっちの隅《すみ》の方《ほう》へ、まいまいつぶろ[#「まいまいつぶろ」に傍点]のようンなって、一|服《ぷく》やっておりやしょう」
ニヤリと笑《わら》った松《まつ》五|郎《ろう》が、障子《しょうじ》の隅《すみ》へ、まるくなった時《とき》だった。藤吉《とうきち》に案内《あんない》されたおこのの姿《すがた》が、影絵《かげえ》のように縁先《えんさき》へ現《あらわ》れた。
「師匠《ししょう》、お連《つ》れ申《もう》しました」
「御免やすえ」
「さァ、ずっとこっちへ」
欝金《うこん》の包
前へ
次へ
全263ページ中148ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
邦枝 完二 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング